例文2本を、16項目で採点する
例文を「良い例」「悪い例」で見せる記事は多いですが、どこが何点で、なぜその点なのかまで書いてあるものは少ない。ここでは、実際の診断レポートと同じ形で2本を採点しました。自分の原稿を自己採点するときの物差しに使ってください。
例文① 文系(社会学部)— Cランク 3.5
読める文章になっていて、一貫性と独自性は4点。ただし「なぜこの大学か」が校風の話で2点、数字が無く、結びが定型に近い。典型的な「あと少し」の原稿です。
採点した原稿 架空の受験生が書いたものとして作成
私は、誰もが住み慣れた場所で暮らし続けられる地域のしくみを学びたいと考え、◯◯大学社会学部を志望します。
きっかけは、高校一年の冬、祖母がひとりで買い物に行けなくなったことでした。近所のスーパーが閉店し、いちばん近い店まで車で二十分。祖母は免許を返納していました。私が週末に付き添うようになりましたが、祖母は「迷惑をかけて申し訳ない」と繰り返し、以前より口数が減っていきました。私はこのとき、移動の問題が単なる不便ではなく、人の自尊心や人とのつながりを削っていくのだと気づきました。
この経験から、高校二年の春に地域の移動支援ボランティアに参加しました。高齢者を病院や店に送迎する活動です。続けるうちに、利用者の多くが「誰かに頼むこと」そのものにためらいを感じていること、そして送迎の車内での会話を何より楽しみにしていることが分かりました。私は活動の中で、利用者が申し込みやすくなるよう、予約の電話ではなく回覧板に申込用紙を挟む方法を提案し、実際に採用されました。
この活動を通して、私は「移動」を交通の問題としてではなく、地域の人間関係や制度の問題として考えたいと思うようになりました。◯◯大学社会学部では、地域社会学と都市政策を横断して学べると知り、自分の関心に最も近いと感じました。また、フィールドワークを重視した教育方針にも強く共感しています。
将来は、行政や地域の団体で、高齢者が孤立せずに暮らせる地域づくりに関わりたいと考えています。祖母のような人が「申し訳ない」と言わずに暮らせる社会をつくることが、私の目標です。
書き直しが必要な箇所がある
読める文章にはなっていますが、評価が分かれる箇所が残っています。優先度の高い順に直してください。
評価できる点
- 祖母の話を「不便」ではなく「自尊心と人とのつながりの問題」として捉え直した部分に、この人の観察力が出ている。ここがこの原稿の芯です。
- 「回覧板に申込用紙を挟む」という提案は、課題を見つけて自分で動いた証拠になっている。この一点で、多くの志望理由書と差がつきます。
最優先で直す3点
- 数字を入れる活動期間(何か月)、送迎した回数か人数、回覧板方式にして申込みが何件から何件に増えたか。いま数字がひとつもありません。最も直しやすく、最も効きます。
- 「なぜこの大学か」を書き直す「横断して学べる」「フィールドワーク重視」は、同系統の学部を持つ他大学にもそのまま当てはまります。具体的な科目・ゼミ・研究を1つ挙げ、他大学との違いを1点だけ書いてください。
- 「なぜ社会学部か」を用意する福祉学部でも政策学部でもなく社会学部を選んだ理由が、本文にありません。1文入れるだけで、面接で最初に突かれる穴が消えます。
全体印象
大学適合度
根拠の質
論理構成
面接リスク
将来性
例文② 理系(情報工学科)— Bランク 4.0
祖母の服薬ミス→アプリ→通知設計の失敗→情報工学、と一本でつながり、数字も場面もある。弱いのは「なぜこの大学か」と「専門用語の説明」の2点で、どちらも1〜2日で直せます。
採点した原稿 架空の受験生が書いたものとして作成
祖母が同じ薬を2回飲んでしまったのを見たのは、高1の冬でした。薬のシートに日付を書く方法は、祖母自身が「見えにくい」と言って続きませんでした。私は、祖母のスマートフォンに、飲んだら押すだけのボタンと、押されなかったときだけ家族に通知が届くアプリを作りました。
最初の設計は失敗でした。毎回の服薬時間に通知を出したところ、祖母は3日目から通知を無視するようになった。通知が多いと、通知は意味を失う。そこで、通知は「押されなかったとき」だけ、しかも家族側に出す形に変えました。この形にしてから3か月、週2回の確認で飲み忘れは0回です。
作ってみて分かったのは、機能を増やすことより、人がどう振る舞うかを先に考えることの難しさでした。貴学科の△△研究室が扱うユーザビリティの研究は、まさにこの「人が実際にどう使うか」を対象にしていると知り、志望しました。
大学では、1・2年次でプログラミングと統計を土台として身につけ、3年次以降に△△研究室で、高齢者向けの通知設計をテーマに研究したいと考えています。卒業後は、医療機器や介護の現場で使われるソフトウェアの設計に関わりたい。祖母が続けられたものを、祖母以外の人にも届く形にすることが、私の目標です。
あと1〜2箇所で仕上がる
一本の線が通っていて、数字と場面もある。弱いのは「なぜこの大学か」と「専門用語の説明」の2点で、どちらも1〜2日で直せる。
評価できる点
- 祖母の服薬ミス→記録アプリ→通知の仕組み→情報工学、と一本でつながっている
- 週2回・3か月・ミス0回、と数字で結果が示されている
- うまくいかなかった初期の設計(通知が多すぎて無視された)を自分で書いている
最優先で直す3点
- 「なぜこの大学か」が研究室名だけ研究室名は出ているが、他大学の同分野との違いに触れていない。「他大学は〇〇だが、貴学は△△」を1文足す
- 「ユーザビリティ」の説明が浅い用語は正しいが、自分の経験(通知を減らした判断)と結びつけて説明すると理解の深さが伝わる
- 結びが定型に近い「以上の理由から」を消し、祖母の1文で締める
全体印象
大学適合度
根拠の質
論理構成
面接リスク
将来性
2本に共通して低い項目
どちらも「この大学でなければならない理由」が2点です。文系・理系を問わず、いちばん多くの原稿がここで止まります。他大学との比較を1つ入れるだけで、この項目は3〜4点に動きます。
自分の原稿は何点か
16項目を自分で採点できるシートを用意しています。自分では判断しにくい項目は、評価者が全文を読んで採点する無料診断(お一人2回まで)をお使いください。3日以内にレポートでお返しします。